人に死ぬ価値はあるのだろうか?人に死ぬほどの価値はあるのか? 俺は車輪のない戦闘機に乗りながらふと思った・・・ ーーー2日前、11月22日 「御堂准尉!」 「あー・・・?その堅苦しい呼び方はやめてくれよ、総司よぉ・・・」 「だって一応階級は御堂の方が上だし・・・」 「いいんだよ、昔のまんまの呼び方で、ただし二人の時だけな」 「わかったよ、御堂」 俺は御堂祐介、階級は准尉、性格は自称温厚、特技は喧嘩・・・ってこりゃあ 特技でもなんでもないか。俺は「クライムカンパニー総合警備団」に所属する世間的に いわせれば軍人みたいな位置の地位にいるわけだ。 クライムカンパニーは表向きは貿易会社・・・・しかし裏の企業ではアームズカンパニー・・・ つまり兵器会社という事になる。そんなクライムカンパニーが他国籍企業ともめ事をおこし、 国際問題、さらには戦争まがいのことをやっていたりもする。 その軍隊まがいの警備団に俺は所属しているわけだ。 「・・・御堂?誰に説明しているんだ?そんなこと」 「気にするな、総司クンよぉ」 さっきから堅苦しく会話してきたり、いきなりなれなれしく話したりしているこいつ・・・ 名前は天城総司、俺の昔からのダチでマジメだがどこか抜けているこいつの性格と なぜか馬があい、現在にいたるわけだ。 「ところで、何の用だ?総司」 「そうそう、少佐が呼んでるぜ、なんかしたのか?」 「いや・・・そんな覚えはないが・・・・まぁ行ってみるか」 「かなり深刻な顔をしてたみたいだぜ、くれぐれも粗相すんなよ?」 「わーったよ、ありがとうな」 クライムカンパニーの警備団は海辺の人っ子一人いないような場所に位置ある。 理由は軍事演習、元はもう少し都会の方にあったのだが、民衆からの猛反対にあい、 しかたなく場所を移したわけである。 そして規模なのだが・・・大型空母3隻、戦闘機180機、早期哨戒機・・・つまり偵察機は12機、 重巡洋艦2隻、駆逐艦6隻、その他小型もろもろが多数・・・ いわば中の上くらいの規模なワケである。 規模説明をしたところで、少佐のいる司令部に到着した。 司令部は港にあるのだが、そんなに目立たない外壁は真っ白な建物だ。 「きたか・・・御堂准尉」 「お呼びでしょうか?少佐」 「ふむ・・・君を呼んだのは、君にある任務をやってもらいたいからなのだ・・・」 「ある任務というと?」 「はっきりいって、ウチの企業の情勢は悪い、それは敵が新たな新兵器を導入してきたのだ」 「新たな兵器というと?」 「それが今だにわからないのだ、そこで君には偵察の任務を頼みたいのだ、ただ・・・」 「ただ?」 「非常に危険なのだ・・・なにしろ敵の本部あたりまで行かないと行けないのだ」 「・・・わかりました、その任務うけましょう」 「うむ・・・・たのむぞ、任務執行の日は11月24日の正午だ・・・」 本当はうけるつもりはなかった・・・・しかし俺のプライドが任務を断るという事を 許さなかったのだ・・・つくづく自分の性格がイヤになった。 その夜はなかなか寝付けなかった。 ーーー前日、11月23日 昼頃に目がさめた・・・少佐に今日はゆっくり休めといわれたのでその言葉とおりに 行動することにしたのだ。しかしそんな休んでいた俺に突然の来訪者が現れた。 「祐介クンいるぅ?」 「おーい、御堂、起きてっか?」 「あー・・・・起きてるぜ、なんの用だ?舞、総司」 「昨日、上司さんから何のお話があったの?」 俺は考えてしまった・・・任務の事を言おうかどうか・・・ あ、そういえば紹介がまだだったな(誰に言ってんだ?) このイキのいい女は桜木舞、総司と同じく古くからの友人だ。 とにかくそんな二人に危険な任務のことを言って心配させたくなかったのだ。 「・・・・どうした?御堂」 「いや・・・それより何の用なんだ?お二人サンよぉ」 「あ、そうそう、今日二人とも非番でしょ?どっか行こうよ」 「俺は御堂が行くならいくって事で、お前の意見を聞きに来たワケだ」 「・・・ああ、いいぜ、それよりどこかってどこだ?」 「えっとね、とりあえずどっかで買い物して、夜になったら久々にのみに行きましょうよ」 「そうだな、んだらば行こうか・・・」 「御堂・・・そのんだらばってネタつまらないぜ」 「気にすんな、いくぞ」 俺らは適当に港ぞいの商店街で買い物をして・・・ちなみに俺が買ったのは 煙草(ちなみに銘柄はハイライト)のみ、俺は買い物が苦手なのだ。 そして夜、これまた商店街沿いにある安居酒屋に入った。 俺は酔うと無口になる、ちなみに総司はすぐ眠って舞はというと・・・ 全然酔わないのだ、最強クラスの酒の強さなのだ。 そしてただいま開始10分。隣では総司が惰眠を貪っていた。 「ねぇ雄介クン・・・・?」 「ん?なんだ?」 「上司さんとの会話って・・・何のことだったの?」 舞が心配そうに声をかけてきた。 それに俺は酔ったせいもあってか本当の事を全部舞に話した。 「ええっ!?そんな危ない任務うけたのっ?なんでよ・・・?」 「ま・・・俺のプライドっていうもんかな・・・」 「だめよ・・・危ないじゃない・・・もしかしたら死んじゃうんでしょ?」 「まぁな、そうなる事もあるな・・・」 「・・・どうせいくら止めても聞かないんでしょ?」 舞は俺の性格をわかっている、一度決めたら曲げないこの性格を・・・ 「ああ・・・」 「絶対無事に帰ってきてね?約束だよ?」 「帰ってくるさ・・・必ずな!」 そして夜はふけていく・・・・ なぜか祐介は心地よく眠れた。 ーーー当日、11月24日 「あ・・・今日は俺の誕生日だ・・・」 そう、俺は11月24日生まれ、キリがいいな・・・ってなんのキリだよ。 自分の最後の日になるかもしれないからか? 今は午前10時・・・あと2時間後には任務執行だな・・・ 「御堂・・・」 「ん?総司じゃねぇか、どうした?」 「聞いたぜ・・・・舞から・・・」 「あいつ・・・言うなっつっといたのに・・・」 「もう俺が言う事は何もないさ・・・無事に帰ってこいよ」 「ああ・・・・ありがとうな!」 俺は総司と別れ司令部に向かった。 「よく来てくれた、御堂准尉、ではこれから準備にとりかかってくれ」 「少佐、一つ質問があるのですが・・・」 「なんだ?」 「自分が生き残れる確率というのは・・・?」 「・・・」 「正直に言ってもらえると嬉しいのですが・・・」 「・・・約3割だ・・・」 「・・・・わかりました、それでは御堂准尉、これから準備にとりかかります」 「・・・・うむ、頼んだぞ」 俺は正直死の覚悟をしていた、少尉に偵察機内での喫煙は非常に危険だからやめておけ といわれたから今俺は最後になるかもしれない一服を楽しんでいる。 「やっぱり煙草ってうまいな・・・」 そんなことを口にして、ちょうど一箱を終えたところで出発のサイレンがなった。 「御堂准尉極秘偵察任務遂行、目的地、オーストラリアの湾岸基地!」 機械的な言葉がけたたましく響きわたる・・・ そして俺は出発した。 「随分遠いもんだな・・・オーストラリアって」 プロペラントタンク八基追加したこの偵察機は燃費がよくかなり長持ちする。 オーストラリアは約8時間ぐらいで着くらしい。 そして事件は起こった。 丁度6,7時間飛行してぐらいの事だ。 「!!・・・車輪の部分にレッドランプが・・・」 故障を表すライトが点滅している。 「整備不良か・・・俺に死ねってか? ふざけやがって!しっかり見とけよ・・・偵察機の整備くらい・・・」 俺は独り言を叫びながら道のりを行っている・・・ 俺にできるのは叫ぶ事しかできなかった。 「・・・見えた!あれが湾岸基地か・・・ばれないように超低空で飛行っと・・・」 俺は海すれすれの高度で飛んでいる・・・しかしそんな事で探知されないほど 湾岸基地も甘くはなかった・・・ 「!!やばい、探知されたかっ!・・・砲弾が・・・くる!」 俺はエンジンを臨界まで引き上げ砲弾をかわしていく、 ・・・・しかし 「ぐぅ・・・!やばいな・・・砲弾が翼にあたったか・・・帰れないかな・・・」 俺は右翼が炎上する様を見てあきらめをつけた・・・ 「俺は・・・俺はプライドで動いてるんだよ!」 少佐からはこんな事もいわれていた・・・ あわよくば新兵器をこわしてくれ・・・と。 その意味は危機的状況に陥ったら無駄死にはするなって事だと俺は理解した。 そして俺はエンジンを全開にして湾岸基地に飛び込んだ・・・ 「はは・・・俺、死ぬな・・・死ぬことの価値はあるのか?  価値がなきゃ結構さみしいもんだな・・・」 11月24日・・・・それは彼の大地に生まれ落ちた日でもあり、 また、土に返った日でもあった・・・・。 劇終