「おはようございます、所長」 「来たか・・・用件はなんだ?」 「なんだって・・・所長がお呼びになったんじゃないですか」 「そうだったな・・・いつもの癖が出てしまってな」 私は苦笑する。周防達哉たちのことだろう。見た目は相変わらず太っ腹な中年親父だが、その目つきの鋭さがいかに彼が切れる人間かを 表している。この葛葉探偵事務所の所長・・・名前は知らない。疑問を持つことはこの世界においては良いことではないから私も敢えて 訊ねたことはない。とにかく外見と中身がまったく違う男だ。 「この前の件は片付いたか?」 「はい。報告書はこちらに。そのMDの中に関連のものも入っています」 「ご苦労だった。さっそくで悪いが次の仕事だ。ここに書いてある場所に行って中を調べてこい。今回は俺のGUNPを使って構わん」 「・・・サマナーのほうの仕事ですか。わかりました。戦闘があると解釈してよろしいのですね?」 「ああ。それから・・・後でアシスタントをつける。合流場所については追って連絡する」 「アシスタント?ただし君ではないのですか?」 「あいつには荷が重い。今回は少し厄介なのでな」 その時事務所のドアが開く。 「いらっしゃいませ。ご用件は・・・ってただし君」 「ただいま帰りました〜。あれ?たまきちゃんいたんだ。まあいいや。所長。依頼してきましたよ。しかし妙な話ですね〜」 「ちょっと、何よ、その"まあいいや"って。それじゃあたしがおまけみたいじゃない」 「え?あ、いやその・・・そういうつもりじゃなくて・・・」 「だいたい最近冷たいんじゃない?仕事が忙しいのはわかるけど、全然・・・」 「わぁ〜!わ、わかったから。まずは報告。ね?」 私は多少むっとしながらも所長の対応を待った。しかし依頼とはなんだろうか? 「ご苦労だった。頼んでおいたものも手に入れたか?」 「ええ。そっちもバッチリです。しかし最近はたいした事件もないのにこんなもの何に使うんです?」 「その話はたまき君のほうにしよう。先程の件がらみだ。」 「とすると・・・必要となるもの・・・ですね」 「そういうことだ。おい」 「は?」 いきなり話し掛けられたただし君が間抜けな返事をした。相変わらず頼りない。 「は?じゃない。ブツを見せろ」 「ええ?こ、ここでですか?そ、そりゃ・・・その・・・せめて所長には席を外して・・・」 「何を勘違いしている。頼んでおいたもののことだ」 「あ、ああ。そっちですか。はい、え〜と、これですね」 それを見た瞬間私は覚悟を決めた。出てきたのは大量の宝玉、チャクラポット、反魂香、各種ステータス回復アイテム・・・ そして銃器と剣だった。 「回復アイテムは実家ですから苦労しませんでしたけどね、武器のほうはそれはもう・・・懸賞に大量に応募したりカジノで儲けたもの をまとめて売っぱらったり・・・」 「ふむ・・・シグザウエルP228か・・・まあいいだろう。こちらは・・・妙法村正か。よく手に入ったな」 「そっちは懸賞です。いや〜、結局297冊も応募しましたよ。普段はたまきちゃんの仕事なのに・・・」 「ふむ・・・そうだな。たまき君、これも持っていくといい」 「それは・・・」 神酒。ソーマ。あらゆる病気や怪我に効く万能薬。酒は百薬の長とはよく言ったものだが・・・ 「・・・こんなものまで必要なのですか、所長」 「・・・そうだ。本来なら"あいつら"の仕事なのだが・・・まあいい。頼んだぞ」 「はい、では行ってきますね」 「あ、ちょっと、たまきちゃん、俺も・・・」 「ダメ。ただし君はここにいなさい。・・・大丈夫よ。そう、また私の番が来ただけ・・・」 「そんな・・・たまきちゃ〜ん・・・」 「あ、そうだ、所長。さっき言っていた依頼とは何でしょうか?」 「・・・そのうちわかる。例のアシスタント絡みだ」 「わかりました。では・・・」 私はなにやら泣いているただし君を置いて事務所を出るとまずは春日山高校に向かった。 「というわけで仲魔を増やすからよろしくね」 私はネコマタを召喚すると早速話を切り出した。 「わかったニャ。交渉は任せるニャ。でもなんで急に新しい仲魔が必要なんだニャ?」 「勘よ。あの所長があれだけ弱気になるということは・・・敵は相当強いでしょうから」 「ニャ・・・面倒なことは嫌だニャ・・・一銭にもニャらない仕事ニャんて・・・」 「何を言うのよ。毎回相場の2倍のお金とマグネタイトを持っていくくせに。それとも・・・この場で私に消されたい?」 「!!!ニャニャニャ〜〜〜!!!それだけは勘弁ニャ!!!」 「だったら給料分働きなさい」 「ニャ〜・・・」 始めてデビルサマナーの仕事をした時に出会ったのがこのネコマタだった。ピクシー相手にカツアゲをしているところを後ろから はたき倒して・・・そのままGUNPに居着いてしまったのだ。 いかに悪魔といえどもやはり一度仲魔になれば情もうつる。私がこんな下級悪魔をいまだに使役しているのもそのためだ。 「さて・・・始めるわよ」 「ニャ!」 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ・・・1時間後。 「ふう・・・こんなものかしら。じゃあよろしくね、みんな」 「我らに任せるがいい」 インストールソフト・・・フライデーとスティーブンを使い私は高位の仲魔を呼び出すことにした。 大天使サンダルフォン、魔王ロキ、魔神オーディン。彼らの力をもってすればだいたいの仕事は可能なはずだが・・・ 「そうね・・・サンダルフォン、前衛をよろしく。あとの二人は何かあれば呼び出すわ。GUMPに戻っていて」 「イエス、マスター」 「あにょ〜・・・私の立場は・・・?」 ネコマタが話かけてくる。しかし・・・ 「ダメよ。あなたも戻りなさい。今回は正直あなたには荷が重い。だから・・・」 「わかったニャ・・・」 しぶしぶという感じでネコマタがGUMPに戻る。ごめんなさい。でも本当に・・・ さて・・・準備は出来た。あとはあそこに行くだけ・・・ 私は蓮華台に向かって歩き始めた・・・ to be next...